マンガには「心の師匠」がいる。――『モブサイコ100』に教わる人生訓
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マンガには「心の師匠」がいる。――『モブサイコ100』に教わる人生訓

この記事を書いた人

安藤エヌ

日大芸術学部文芸学科卒業。フリーライターとして活動のかたわら創作をし、文章執筆の他にアマチュアとしての写真撮影を趣味とする。 レビュー執筆では文学・映画・アニメ・漫画等、ジャンルは多岐にわたる。 Twitter:@7th_finger

迷いながら歩む人生に、「心の師匠」のような存在がいたら――

そう感じたことはありませんか?

悩んでいたら的確なアドバイスをくれたり、落ち込んでいればさりげなく励ましてくれたり。

現代を生きる私たちには「拠り所」となる人物がいてくれたら、と思うことが何度もあることでしょう。

頼れる上司、共感してくれる友達、腹を割って話せる家族。

自分を思ってくれている人の存在は、物事が上手くいかなくなった時、とても頼もしく感じます。

山あり谷ありの人生は、どん底のように思える瞬間があります。

周囲との距離がぐんと遠く感じて、自ら一人を選び、塞ぎこんでしまうこともあるかも知れません。

私はそんな時、「ページを開けばそこにいる」マンガのキャラクターに救われました。

マンガの中から語りかけるようにして、彼らは大切なことを私に話してくれました。

直接的な温もりを感じることすらも億劫になってしまうような時、彼らはいつもそこに――まるで私の隣にそっと座って、ただじっと話を聞いてくれているかのように傍にいてくれました。

キャラクターではなく、ひとりの人間として。

今回はそんな「人間じみている」とある1人のキャラクターと、きっと彼なら今まさに落ち込んでいる人にとっての「心の師匠」になってくれるだろうという思いを込めて、作品の魅力もあわせてご紹介したいと思います。

(出典:モブサイコ100(1):ONE)

「人間味」から発せられる、まっすぐな言葉

ONE原作『モブサイコ100』は、2017年に小学館漫画賞を受賞し、テレビアニメ・舞台・ドラマなど多方面でメディア化のされた人気作品です。

主人公は影山茂夫(かげやましげお)というごくごく普通の中学2年生。

運動も勉強も特別秀でているわけではない彼には、ひとつだけ他人と異なる能力が備わっていました。

それは強大な超能力で、彼がその気になれば世界征服も出来てしまうほどの力だったのです。

あまりにも強い力を前に戸惑っていた小学6年生の茂夫と出会ったのは、超能力が全く使えない自称霊能力者・霊幻新隆(れいげんあらたか)

彼は茂夫に自身の経営する心霊系相談所「霊とか相談所」の助手として依頼された除霊を全て茂夫にやらせている詐欺師でありながら、茂夫の人生を導く「師匠」として、生きていく上での教訓を説いていきます。

魅力の本質は「人間味」だ、いい奴になれ。(引用元:モブサイコ100/ONE/9巻)

お前の人生の主役はモブ、お前だろ(引用元:モブサイコ100/ONE/1巻)

嫌な時はなあ、逃げたっていいんだよ!(引用元:モブサイコ100/ONE/6巻)

茂夫とは違い、「ただの人間」としての人生を歩んできた霊幻だからこその深みが滲み出る言葉の数々……

霊幻から教わったことで、茂夫は人を傷つけるために力を使わず、驕らない人間として成長していくのでした。

超能力バトルマンガの垣根を超えた「人間くささ」

『モブサイコ100』の魅力は、登場人物の大半が超能力を有しているキャラクターであるにも関わらず、誰しもが苦悩や葛藤を抱えている「人間味」であると感じます。

特殊な能力が備わっているゆえに、他人と比較したりヒエラルキーを過剰に意識したり、疎外感を抱えているキャラクターが大勢います。

そんな世界だからこそ、何も特別な力を持ち合わせていない非・能力者である霊幻新隆の人間性が際立ち、マンガに深みを与えているのです。

超能力者の茂夫からしてみれば、霊幻はただの「ふつうの人」でしかない――

けれど彼は茂夫にとっての「師匠」であり、どんな時でもまっすぐで偽りのない言葉を投げかけてくれる、人生の道標のような存在となっています。

読者は物語を読み進めながら、霊幻の発する台詞によって茂夫と同じように励ましてもらったり、ハッとさせられたり、今までの人生を振り返ってみたりすることでしょう。

彼の言葉には、平凡に生きてきたからこその苦悩が下敷きとなっていて、何者にもなれずに大人になった人間のリアルな感情が乗せられています。

だからこそ、私たち読者の心に自然と寄り添い、余計な嫌味がなくストレートに響いてくるのです。

マンガから教わる、生きていく上で大切なこと

霊幻は茂夫の「師匠」であり、私たちの「師匠」として、人生に行き詰った時の大切な存在になる――

そんなキャラクターといえます。

キャラクター、というより、人間、と言ったほうが近いのではないでしょうか。

人生訓、というと説教くさく聞こえるものでも、マンガのキャラクターが私たちに向けて投げかけてくれる言葉は、スッと心に浸透して、明日を生きるエネルギーに変えてくれます。

今日は誰にも会いたくない……

そんな気持ちになってしまった時には、この『モブサイコ100』を読んで、霊幻の言葉に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

きっと彼なら、あなたの心に響く言葉を語りかけてくれる師匠になってくれるはずです。

今回紹介した作品はこちら

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